自由研究「エビ中とは?」④

【ebichu prideから6voices】



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2018年1月4日。
6人体制となったエビ中日本武道館でのライブで新たなスタートを迎える。
『ebichu pride』と銘打ったこのライブは今でも語り草の伝説のライブとなった。

当時グループで最も知名度の高かった出席番号6番廣田あいかが、前日に同じ日本武道館でのライブをもって転校。


グループのパワーダウンが懸念される中で、前日と同じ場所で6人でのスタートを切った。
しかも1曲目に披露したのは廣田のイメージが強い『シンガロン・シンガソン』。
廣田が好きなMrs.GREEN APPLE大森元貴に楽曲提供してもらった彼女のラストシングルだ。

これは明らかな宣戦布告。
廣田がいた7人のエビ中や、そのイメージを持つ人々への。

1曲目からハイパフォーマンスを見せたこのライブをエビ中史上NO.1と推す声も多い。
しかしその裏で藤井校長が画策していたのは新メンバー加入発表のサプライズだった。
これは限られた数人のスタッフしか知らない計画で、当のメンバー達にも知らされていなかった。

やはり誰かが抜けたら誰かが入ってきたエビ中。しかも今回は廣田という絶大なグループのアイコンを欠くわけだから尚更だった。

それでもこの日に賭けたメンバーの鬼気迫るパフォーマンスに「するにしても今日じゃない」とサプライズは直前で消滅。
結果的にメンバーの気迫が勝ったこととなる。


後日改めて新メンバー加入について藤井校長はメンバー達の意見を聞くことに。
この時はメンバー達は否定的というわけではなく、前向きだったメンバーもいたようだ。これはかほりこ加入前後の変化でもあった。

そんな中、柏木ひなただけは新メンバー加入に納得がいかず「この6人で」と直訴した。

新メンバーを入れたい藤井校長と、新メンバーを入れず6人でやりたい柏木。話は平行線を辿る。
最終的には話し合いの中から柏木の熱意が通じたか、藤井校長はひとまず新メンバー加入は今はしないと判断。
後日それを告げられた柏木は大粒の涙を流した。






こうして始まったこの6人体制。振り返ればとにかく万全な状態でメンバーが揃わない時代だった。

そもそも柏木は2015年に突発性難聴を、小林は2016年にバセドウ病を発症しており、当時より落ち着いてはいるが不安が全くないというわけではなかった。

2018年12月には星名がリハーサル中に舞台から転落。頭部をはじめとした負傷で一歩間違えれば命の危険があったほどだった。
向こう1年ほどは安静が必要と言われたが、星名は2019年がエビ中10周年記念イヤーということもあり早期復帰。とはいえパフォーマンスは制限され、お立ち台に乗る形でパフォーマンスを続けた。

出席番号ラッキー7星名美怜。メンバーカラーはピンク。エビ中で1番アイドルらしいと言われるが、「エビ中のイマドキ革命ガール」を名乗るように革命を起こすメンバーでもある。一方で真山に次ぐ年長メンバーでもあり、常に朝のチャイムを鳴らしていることからもわかるが必要な時にはしっかりとグループの先陣を切れる。
奇しくも怪我からお立ち台に乗ることになり「横一列」を自称するエビ中の形を崩してしまうことになったが、お立ち台に乗らなくともいつもグループ全体を見渡せる視野と責任感を持っているように思う。



星名の完全復活が見えてきた、2019年10月。今度は安本が体調不良で活動休止に。
翌2020年3月から活動再開するが、10月に悪性リンパ腫が発覚し再び活動休止。

ついには2021年に新メンバーオーディションが開催されることになり、6人が揃わないまま6人体制の終わりが見えてしまうことに。


それでもメンバー達は前向きだった。

安本の帰る場所を守ることを約束し、舞台に立ち続けた。
『6voices』と銘打った6人体制ラストツアーでは安本のフィーチャーされたブロックを作り、安本の声を流した。
メンバー、スタッフ一丸で安本の居場所を作り続けた。

パフォーマンスに力を入れた6人体制。
「パーフェクトピッチ」と称される出席番号5番安本彩花の声はエビ中にとっては必要不可欠。メンバーカラー緑の「トマト大好きリコピン少女」には、そのどこか抜けたキャラクターを活かしたMCという役割もある。
人間味溢れるというか、不器用だがまっすぐ。エビ中のことを愛し、常にその未来を模索し続けている。だから周りからも愛される。
真山に次ぐ古株だが、彼女が現メンバーで二番目に入った意味もまたとてつもなく大きいように思う。
いつの時代も新メンバー加入にはずっと前向きで、教育係としてかほりこを育てたのも彼女だった。

そんな彼女がいない中、新メンバーオーディションは行われ、2021年5月5日に新たに3名が加わりエビ中は「9人体制」に。
結局6人が万全で揃うことが少なかった「6人体制」は最後も安本不在のまま幕を閉じた。







「6人体制」を誰よりも望んだ出席番号10番柏木ひなたは、その圧倒的な歌唱力とダンスでエビ中を牽引し続けた。
パフォーマンスに力を注いだ6人体制は、ある意味でこのオレンジをメンバーカラーとする歌姫の自作自演でもあったように思う。
それは決して悪い意味ではなく、6人でやりたいと意志を示し6人の物語を作り出し、その意味を自らの高いパフォーマンス力で示してきた。
キャッチフレーズの如く「いつも笑顔なおもちゃ箱」ではあるが、元来は真面目な性格でネガティブなところもある。
6人でやって行きたいと示したのは自分だけだったことに少しの寂しさと責任を感じていた。
それ故に伝説となった『ebichu pride』を超えれなかったのではないかと悔やんでいたようだが、″エビ中の誇り″というものと誰よりも向き合い体現し続けていたのは柏木だったように思う。










この6人の声は不思議だ。

真山の芯の通った艶やかな歌声
安本のパーフェクトピッチ
星名のハイトーンボイス
柏木の絶対的なエモさ
小林の唯一無二の優しい声
中山の魂に訴えかけるような歌い方


その性格のようにそれぞれが違う個性でありながら、まとまった時にはもの凄く綺麗なものになる。

思わぬ試練で不在のメンバーが出てしまう時期は長かったが、それでも誰かがその穴を埋めて繋いできた。

特に柏木は突発性難聴で活動休止中に、治らないかもしれない不安とグループに迷惑をかけてしまう状況からエビ中を辞めなければならないと思い悩んだ過去がある。
だからこそ帰ってくる場所を守ることの重要性を感じていたに違いない。

星名も同様で、辞めなければならないと思った過去があるし、彼女自身が命の危機にさらされて間もなく今度は安本の帰る場所を守る立場になった。
真山が「ご褒美のような時間」と表した6人体制を、新メンバー加入に前向きだった星名は、誰よりも「大好き」と言って惜しんだ。

紫、緑、ピンク、オレンジ、黄色、水色。

この6色のサイリウムのバランスは綺麗だ。
その景色をファミリーだけでなくメンバー自身も愛した。そうしてまとまった6人の穏やかながらも強い意志は、どれか一つが欠けそうになっても互いにその火を消さぬように支え合った。





そうした強い思いと努力で必死に守り抜き、必死に磨き上げたのだからこの期間は決して間違いなどではない。
6人の声は確実に世界中のどこかに響いている。